
え〜、お立ち会い。
公園にあるブランコというものは、なんとも不思議な道具でございます。
前へ行って、後ろへ戻る。
戻っているようで、少しだけ空に近づく。
子どもにとっては遊び道具。
大人にとっては、なぜか座るのに少し勇気がいるもの。
けれど、誰かを待つ場所にもなり、ひとりで考える場所にもなり、思い出がふっと戻ってくる場所にもなる。
本日読むのは、ブリッタ・テッケントラップ作、梨木香歩訳、岩波書店の『ブランコ』。
海を見渡す丘に立つ、ひとつのブランコ。
そこに訪れる人たちの時間を、静かに見つめる絵本でございます。
📘 本に関する基本情報
📖 書名:ブランコ
✍️ 作:ブリッタ・テッケントラップ
🖊 訳:梨木香歩
🏢 出版社:岩波書店
🎯 対象年齢:小学校中学年ごろから大人まで
※テーマは大人にも深く届く絵本です。
📚内容紹介(公式HPより)
海を見渡す丘の上にたたずむブランコ。そこには、いのちが、夢が、物語が、満ちている――。はしゃぐ子どもたち、夕日を見つめる老人、将来を夢見る少年……訪れる人びとのささやかで特別なひとときを、淡く輝く絵と詩情豊かな言葉で紡ぐ。人気絵本作家による静かな感動を呼ぶ絵物語を、作家・梨木香歩の端正な翻訳で贈る。総ルビ。
📚 えほん深掘りトーク
※以下の感想では、物語の展開について詳しく触れています。
オープニング:

今日の本は、ちょっと静かに読みたい絵本だね。

え、こわい本?

ううん。こわくはないよ。
でも、にぎやかに読む本というより、ページをめくったあとに、少し黙りたくなる本かな。

ふーん。タイトルは?

『ブランコ』

ブランコ?それなら楽しいじゃん。公園のやつでしょ?

ところがどっこい。
ブランコというものは、こぐ人によって景色が変わるんでございます。

同じステージでも、歌う人が変わると曲の意味が変わる。
そういう本かもしれないな。

早速読んでみようか。
今日は、急がずに。
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メインセッション
ページを開くと、海辺の丘にブランコが立っている。
赤茶色の支柱。
風に揺れる草。
遠くに広がる海。

ブランコが主役なの?

そう見えますな。
でも、ブランコが何かを話すわけではない。
ただ、そこにいる。

それがいいんだよ。
語りすぎない主役って、強いんだ。
子どもがブランコに乗り、海を見つめている。
草は少し荒れていて、風が丘をなでている。
青い海と空の中に、ブランコの赤茶色だけが、そっと線を引いている。

「こどもも おとなも そこで 海を 見つめた」っていう言葉がいいな。

海を見てるだけなの?

うん。
でも、“見てるだけ”って、けっこう大事なんだよね。

ふーん。でもなんか言わなくても、いっしょに見てたらいい時あるかも。

今の、はるさんの言葉が、この本に近い気がいたしますな。
次の場面では、子どもたちがブランコで遊んでいる。
草の色は明るく、蝶や虫たちがページの中を飛び交っている。
白い余白が広く取られているのに、絵の中の世界はとても豊かです。

この絵、音が小さいんだよな。大きな音で「楽しいぞ!」って言ってこない。
でも、よく見ると、笑い声とか、草のこすれる音とか、虫の羽音がある。

言葉も少ないね。
少ないからこそ、ページの白いところに、こっちの気持ちが入っていく感じがする。
物語は、ひとつのブランコに訪れる人たちを映していく。
子どもたち。
大人たち。
何かを決めようとしている人。
夢を見ている人。
思い出を抱えている人。
ブランコは、そのたびに同じ場所にある。
でも、同じ場所なのに、場面ごとにまったく違って見える。

ブランコって、遊ぶだけじゃないんだね。
なんかさ、座ってる人の気持ちで、ブランコも変わって見える。

……それ、すごく大事なこと言ってるね。

同じ場所でも、うれしい日に見る景色と、さびしい日に見る景色は違いますからな。

ライブハウスもそうだ。
楽しい夜もあれば、泣きながら聴く夜もある。
でも、場所はそこにある。
ページの中で、空の色が変わっていく。
青い空。夕焼け。曇り空。夜。
草は季節をまとい、花が咲き、葉が揺れ、ブランコは黙って立っている。

……これ、ちょっと大人っぽい本だね。
よくわかんないところもあるけど、ブランコの場所は好き。

それで十分だと思うよ。

全部わかる必要はない。
いい本って、あとから意味が追いついてくることがあるからな。

ええ。
今日はわからなかったページが、何年か後に、ふいに心へ戻ってくる。
そういう絵本でございます。

この本は、実際にページをめくって感じてほしいね。

まさに。
言葉にしてしまうと、風が止まってしまうところがございます。それは野暮ってもんで。

あ、結末まで全部喋りたがりのアイシがいつもよりちゃんとしている。

いつもも、ちゃんとしておりますが。

いや、今のはたしかに良かった。
前に出たがりで喋りたがりなだけのカエルじゃなかったな。

褒め方に、少々トゲがございますな。
🎸 GIB’S ROCKER ROOM


Hey! ここでこの絵本のBackgroundを少し鳴らしておくぜ。
まず作者のブリッタ・テッケントラップさん。
ドイツ・ハンブルク生まれのイラストレーターであり、絵本作家であり、ファインアーティストでもあるんだ。ロンドンのセント・マーチンズ・カレッジ、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学び、現在はベルリンを拠点に活動している。公式プロフィールでは、1993年以降に多数の絵本を手がけ、作品は30以上の言語に翻訳されているぜ。

絵本作家というより、アーティストとしての視点が強いんだね。

Exactly。
絵が静かに鳴らしている音に、訳の言葉がそっと寄り添っている。
ドラムを入れすぎない。
ギターも泣かせすぎない。
最後のアコースティックセットみたいに、少ない音で深く届く一冊だ。
🏠 結び


ページを閉じたあと、自分にも「そういう場所」があったかもしれないと思ったよ。
子どものころの公園とか、通学路の角とか、誰かを待っていた駅とか。
何も言わずに、ただそこにあった場所。
この絵本は、そういう記憶をそっと揺らしてくる本でした。

ブランコがずっとあるのがいいと思った。
みんなが来たり、帰ったりしても、そこにあるから。
あと、草がいっぱいの絵が好き。
ちょっと虫がいそうだけど。

俺は、同じ場所を何度も描くところが好きだった。
変わっているのは人で、時間で、光なんだよな。
ブランコは変わらないようで、見る人の気持ちを全部受け止めている。
静かなロックだよ、これは。

わたくしは、この本の“黙り方”が好きでございます。
説明しない。急がない。
ただ、そこにあるものを、こちらが見つめる時間をくれる。
ええ、いいブランコでしたな。
今日のお題:
あなたにとって、思い出がふっと戻ってくる「場所」はありますか?
🔖今日のしおり
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「みんながあつまる場所で
…ひとりを味わうところでもあった」
── 『ブランコ』より
ブリッタ・テッケントラップ/梨木香歩 訳
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✍️この記事を書いた人
juniwa(ジュニワ)
娘との読み聞かせをきっかけに、絵本の魅力にどっぷりハマっています。
子どもも大人も楽しめる、心に響く絵本を日々探しています。


