【訪問レポ】|真夏の猛暑も忘れる幻想世界|junaida展<IMAGINARIUM>@ひろしま美術館

緻密な筆致で中世ヨーロッパの路地へ誘い、気づけば異世界を彷徨わされる。そんな作品を描く画家のjunaidaさん。あまりに世界観が好きすぎて、私のペンネームに“juniwa”と拝借してしまったほどです。今回はjunaidaさんの待望の大規模個展〈IMAGINARIUM〉をたずね、ひろしま美術館に行ってきました。

ひろしま美術館入口

ミドリ
ミドリ

いよいよ来ました。junaidaさんの大規模個展「IMAGINARIUM」

夏空の青と周りの草木・花の色に映えて、ポスターの怪物たちが行進していますね。

パパ
パパ

「IMAGINARIUM」=「imagine」(想像する)+「-arium」(~な場所、空間)想像する場所ってことですね。テーマが「光も闇も引き連れて絵筆に灯る想像と空想」期待が高まります。

はる
はる

カラフルな怪物たちとお花の色が良い感じ。早く中に入って観たい!

ミドリ
ミドリ

エントランスは真っ白な壁に“IMAGINARIUM”の黒文字だけ。余白がある分、文字の存在感が際立ちますね。

パパ
パパ

シンプルですがグッときますね。左に“ROOM 1(B1F)”の矢印がある。あの階段を下りれば、いよいよ展示会場ですね。

アイシ
アイシ

スタート地点、深呼吸して出発!

絵本『街どろぼう』原画

ミドリ
ミドリ

こちらが『街どろぼう』の原画ですね。マットなゴールドの壁に 16 枚がずらりと並んでいます。

パパ
パパ

ああ、孤独な巨人が家を盗んで山頂へ運ぶ物語ですね。コマ送りみたいに少しずつ場面が進んでる。

ミドリ
ミドリ

ええ。絵本だとページをめくりますが、ここでは私たちが歩くことで“物語を追う” 仕組みです。

はる
はる

セリフが無くて絵だけ?

パパ
パパ

セリフがない原画だからこそ、物語を色々想像できるよね。また家に帰って読もうね。

絵本『Michi』原画

ミドリ
ミドリ

ここは『Michi』の原画コーナーですね。金色の壁がまるで長いランウェイのように続き、視界の端から端まで作品が並んでいます。

パパ
パパ

ほんとだ、10メートルはありそう! 『Michi』は左右どっちから読んでもつながってる絵本ですが、本展示でもどちらから歩いても良いわけですね。

ミドリ
ミドリ

『Michi』は文字のない絵本ですから、ページをめくる順序がありません。この展示もその発想を反映しています。

パパ
パパ

“読み進める”んじゃなくて“歩き進める”ってわけだ。進むたびに風景が切り替わるから、自分が道の上を旅してる気分になりますね。

ミドリ
ミドリ

道の色調が少しずつ移ろい、登場人物も増えたり減ったり。歩けば歩くほど新しい枝分かれが見えてくる、そんな構成ですね。

アイシ
アイシ

ふたりが途中ですれ違う“道” の絵、どこだろう。その瞬間を探すぞ!

アコーディオンブック『TRAINとRAINとRAINBOW』

ミドリ
ミドリ

先頭を走る黒塗りの蒸気機関車。そのあとに、雪山の客車、海の船室、サーカス小屋のテント車両……さまざまな風景を積んだ車両が長く連なっています。

パパ
パパ

壁いっぱいを使った超ロングパレード!

ミドリ
ミドリ

絵本サイズでは見落としがちな細部までくっきり。車輪の錆びや客車の装飾、ガラス越しの小さな人物まで描き込みがはっきり分かります。

はる
はる

この列車に乗るならサーカスのテント車両かな。中でずっとショーを見てたい!

絵本『の』原画

ミドリ
ミドリ

すべての文が『の』で循環する、私も大好きな絵本『の』の原画です。ゴールドの壁面がギザギザに張り出し、段ごとに原画がぴたりと収まっていますね。

パパ
パパ

おお、一段ずつ上り下りしながら眺めるから、ページをめくる代わりに体が動く仕組みだね。

ミドリ
ミドリ

そして各段差の〈右側面〉に縦書きキャプションがそっと刷られています。正面の絵に没頭して歩き出すと、横目にタイトルがスッと差し込むんです。

パパ
パパ

なるほど、視線が 絵 → タイトル → 次の絵 ってリズム良く跳ねる。“歩きながらページをめくる”体験になりますね!

アイシ
アイシ

ぼくは音楽の先生のレッサーパンダと仲良くなりたい!

✨絵本『の』の感想記事はこちら

三連画『IMAGINARIUM』

ミドリ
ミドリ

こちらが描き下ろしの三連画《IMAGINARIUM》です。左のキャップ、中央のハット、右の王冠──どの帽子の上にも大小さまざまな街と不思議な生き物がぎゅうぎゅうに棲んでいます。

パパ
パパ

「可愛くて不思議で怪しく綺麗」全部のっかっていますね。今回の展覧会の一番の目玉でしょうか。

ミドリ
ミドリ

その同居ぶりこそ junaida さんの魅力ですね。可愛らしさの奥に影が潜み、影のさらに奥には別の物語が重なっている。多層的で想像が尽きません。

パパ
パパ

なるほど。この作品がjunaidaさんの作品世界の根っこにある光と闇、子供の純粋な視点もありながらちょっとダークな要素も象徴的に表しているように感じますね。眺めていると、自分も帽子の上の想像の世界に吸い込まれそうだ。

ミドリ
ミドリ

鑑賞者の想像がそのまま街の住人になる“余白”があるからでしょうね。想像力のプラネタリウムとでも言うような世界が拡がっている気がしてきます。

パパ
パパ

わたしはハットの女の子の上の世界が良いな。

絵本『怪物園』

ミドリ
ミドリ

真っ暗な壁いっぱいに映し出されるのは、カラフルで少し不気味……でも愛嬌もある怪物たちの大行進アニメーションですね。

パパ
パパ

おお、モンスターが次々横切ってる!影絵みたいに輪郭が伸びたり縮んだり、色も明滅して音もすごい迫力!

ミドリ
ミドリ

ループ映像なので、いつ入っても“途中参加”ができます。色彩が瞬くたび、夜のパレードに自分も紛れ込んだような気分になりますね。

パパ
パパ

これは小さなモニターじゃ味わえない。大スクリーンで体感してこそですね。

アイシ
アイシ

ボクもモンスターと一緒に並んで行進するから写真撮って!

『IHATOVO』

ミドリ
ミドリ

〈IHATOVOシリーズ〉ですね。宮沢賢治の詩に吹く“風”を、そのままキャンバスに呼び戻したような透明感……ため息が出ます。

パパ
パパ

賢治が描いた理想郷“イーハトーヴ”を、junaida さんはずっとライフワークみたいに描き続けてるんですよね。

ミドリ
ミドリ

ええ。賢治ワールドの“詩の余白”が、現代の色彩で再び息づいています。絵を見ていると、頭の中で賢治のフレーズがそっと再生されますね。

はる
はる

青白い星がとてもきれい!

「WHO MADE WHO」

ミドリ
ミドリ

本棚をモチーフにしたインスタレーション「WHO MADE WHO」直訳すると「誰が誰を作ったのか」いろんな映画やミュージシャン、漫画、アニメ、クリエイターの名前が記載された本や雑貨が並んでいます。junaidaさんが影響を受けてきた方々でしょうか。

パパ
パパ

うわっ!『ゴッドファーザー』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、それにジャッキー・チェンの『プロジェクトA』まである! 子どもの頃からドンピシャにハマった映画ばかりだよ。音楽もブルーハーツやスマパンが並んでいるし、中村一義さんも!『金字塔』毎日リピートしてたっけ。こうして並んでいると、自分の“好き”が junaida さんの影響源と重なっているのが嬉しいな。

ミドリ
ミドリ

『WHO MADE WHO』というタイトル通り、“誰が(どんな作品が)今の自分を作ったのか” を自然に振り返らせてくれる棚ですね。

アイシ
アイシ

ボクはマイケルみたいにムーンウォークで滑りたくなった!

展覧会クライマックスへ

ミドリ
ミドリ

展示の最深部。先ほどまでのゴールドや白が一転して深紅。劇場の赤い絨毯が壁面として立ち上がったようです。

パパ
パパ

まさにクライマックスのレッドカーペットですね! 緊張感と高揚感が一気に押し寄せてくる。

ミドリ
ミドリ

ミヒャエル・エンデ『鏡のなかの鏡』をオマージュした作品《EDNE》。闇を探求した『UNDARKNESS』の原画がずらりと並んでいます。

パパ
パパ

“闇”をテーマにしているのに、こんなに色が豊かに見えるのが不思議ですね。

アイシ
アイシ

怖い絵が多いんだけど綺麗で不思議と怖く感じないなあ。

ミュージアムショップ

ミドリ
ミドリ

展示の余韻がまだ胸に温かいままですが……こちらのミュージアムショップも見逃せませんね。

パパ
パパ

図録が平積みで山になってる! Tシャツにフィギュアにトランプまで……財布の紐が試されるゾーンだ。

はる
はる

怪物園のモンスター可愛い!

ミドリ
ミドリ

結局、私は王冠ボーイのピーチ T シャツにしました。家でも仕事帰りでも着られそうです。

パパ
パパ

僕は赤い箔押しが美しいトランプをゲット!箱を開ける前からワクワクするね。

ミドリ
ミドリ

図録もありますし余韻たっぷりの読書会をしましょうか。

パパ
パパ

junaidaさんの絵本を読み返して買ったトランプで7並べ大会だ。

はる
はる

わーい!負けた人は『怪物園』のモンスターのまねっこね!

推しどころ

画家 junaida さんの初期作から近作まで、400 点を超える原画を一度に体感できる大規模個展です。はじめての方にとっては、junaida ワールドへ足を踏み入れる絶好の入り口。広島在住で junaida さんをまったく知らなかった友人を誘って行きましたが、会場を出るころにはすっかり世界観の虜になっていました。

本展では、描き下ろしの三連画《IMAGINARIUM》をはじめ、絵本『怪物園』の巨大アニメーションなども公開。ページの外へあふれ出すイマジネーションが、見る人の想像力を心地よく揺さぶってくれます。

イベント概要

イベント名junaida展「IMAGINARIUM」
会場ひろしま美術館
会期2025年7月5日(土)~8月31日(日)
入館時間9:00~17:00(入館は16:30まで)
料金一般 2,000円、高大生 1,000円、小中学生 500円 <br>※()内は前売・団体料金
休館日会期中無休

juniwaのひとりごと

歩いて、立ち止まって、想像して、また歩いて。junaidaさんの絵本の中に紛れ込んだような一日だった。
奇妙で、ちょっぴりダークで、少し不思議で、可愛くそして美しい──それが junaida さんの緻密な筆致による絵の力だとあらためて実感。

図録とトランプを手に入れたので、今日の順路をもう一度たどるつもり。
展示は 8 月末まで。迷っているなら、早めにどうぞ。

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✍️この記事を書いた人

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juniwa(ジュニワ)

娘との読み聞かせをきっかけに、絵本の魅力にどっぷりハマっています。
子どもも大人も楽しめる、心に響く絵本を日々探しています。
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